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第4回 魂のエース・黒田博樹の素顔

 広島カープファンの皆さんには、これ以上ないほどの嬉しいニュースが飛び込んできましたね。黒田博樹がFA宣言をせずに残留! たとえ残留をするにしても、FA宣言はするだろうと思われていた中での、宣言無しでの残留です。記者会見での言葉も、黒田らしかったですね。カープ以外のユニフォームを着て投げる自分が想像できなかった。14日と16日の広島市民球場で、背番号15のボードを掲げた満員のお客さんに感動した。意気に感ずる、って言うんですか。こういう男気が、黒田の魅力の一つですよね。

 私は黒田とは、もう10年の付き合いになりますけど、ファンからもチームメートからも、誰からも好かれてますね。彼の悪口なんか、聞いたことがないですよ。それだけ人間性が素晴らしいということですね。選手として一流なのは、もう言うまでもないことでしょう。7年連続規定投球回数クリア、去年は最多勝、今年は最優秀防御率のタイトルを獲りました。特に今年の防御率1点台というのは、セ・リーグでは89年の斎藤雅樹氏以来というんですから、大変なことです。現在の日本プロ野球界で、最高の右腕の一人と言っても誰も文句はないでしょう。

 ですけど、その黒田も、最初から凄かったわけではないんですね。ピッチャーには、スピード、コントロール、打者とのタイミング、ハートの強さが必要なんですが、広島に入ったばかりの黒田は、スピードしか持っていませんでした。いくら速くても、バッターとタイミングが合っちゃうもんですから、それはよく打たれてましたよ。フォームもバラバラでね。

 それが化けたのは、4年目の後半戦辺りからですかね。ある時、コレというのがわかったらしいですよ。間というか、タメというか、相手との間合いがわかってきたみたいです。そうして勝っていく内に、ハートも強くなっていったんですね。自分はプレッシャーに強いと、思えるようになったらしいですよ。

 私が広島で現役だったころに受けていたピッチャーと比べると、大野豊にそっくりでしたね。大野も、最初はダメでした。間合いが取れるようになって、あれほどのピッチャーになったんです。

 でも、黒田も適当に投げていて、突然間合いがわかったわけではありませんよ。黒田の同期に、澤崎俊和というピッチャーがおりました。澤崎がドラフト1位、黒田が2位でね。それで、澤崎は1年目から12勝を挙げて、新人王になるわけです。それに比べて黒田はあまりパッとせず、挫折感も味わったようです。でも、黒田は懸命に練習して、その差を埋めようとしました。広島の二軍の寮に、「練習は不可能を可能にする」と貼ってありましてね、黒田は毎日それを見ておりましたよ。それで、不可能を可能にしたんですね。

 女子ゴルフのスーパースターにアニカ・ソレンスタムという人がおるんですが、その人もこんなことを言っておりました。「緊張とか、動揺する暇があったら技術を磨きなさい」ってね。この話を黒田にしたら、「あー、いいですね。コレわかりますよ」と言ってましたよ。相手のことを考えるよりも、自分を磨く。そうして、スピードしかなかった黒田に色んなものが加わって、今日の黒田になったわけです。初めから精神的に強い人間なんかおりません。練習して、自信をつけて、それで精神的に強くなっていくんですね。

 広島という球団は、FAは基本的に引き止めない、複数年契約もしないという球団でしたけど、黒田はそれを勝ち取りました。黒田の年俸は、来年から4年12億円ですか。私、黒田に「来年からまたプレッシャーかかるな」と聞きました。すると黒田は、「いや、プレッシャーあったほうがいいピッチングができますよ」と返してきましたよ。本当に成長しましたね。

 いや~、少しは悪いところも言おうかと思ったんですが、ありませんね、黒田は。来年もプレッシャーという新しい友達と一緒に、素晴らしいピッチングを見せてくれるでしょう。それで、あの記者会見の席で言ったように、広島カープで優勝できれば最高でしょうね。

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