突然ですが皆さん、私は子供の頃、こんなことを教えられて育ちました。「欲しい物は買うな、必要な物は借金してでも買え」。いきなりこう言われても何のことだろうと思うかもしれませんが、この言葉は野球に当てはまると思うんです。選手にとっては、優勝というのは欲しいものでしかなくて、絶対必要というわけではありません。でも首脳陣にとっては、必要なものですよ。特に、巨人の原監督にとっては絶対に必要なものなんじゃないかなと思うんです。というわけで、今回は阪神を猛追する巨人のお話をさせていただこうかなと思います。
今年のセ・リーグは早くから阪神が独走してしまいましたけど、クライマックス・シリーズ争いは、その分混戦になっています。去年日本一の中日はもちろん、今年が市民球場最後のシーズンになる広島カープの意気込みも半端ではありません。ヤクルトにも、まだチャンスがあるでしょう。そして、打倒阪神の最右翼が、去年セ・リーグ優勝を果たしながら日本シリーズに出られなかった巨人です。一時は阪神に13ゲーム差までつけられましたけど、飛ぶ鳥を落とす勢いで勝ち続け、7~8ゲーム差にまで詰めてきました。それでもまだ大きなゲーム差ではありますけど、今や阪神より西武の優勝マジックのほうが少ないんですよ?
あれだけ混戦だったパ・リーグが西武の独走体勢になる中で、巨人はあれだけの大差から巻き返したんです。まだまだチャンスがあります。
巨人は何が変わったかと言いますと、やはり原監督だと私は思います。原監督が選手を「名前」では起用しなくなったんです。
例えば25日の中日戦では、2点ビハインドの9回裏にノーアウト一、二塁で亀井に強攻策を命じて成功したり、久しぶりに起用した古城が逆転サヨナラタイムリーを打ったりしました。
亀井にしても古城にしても、今季レギュラーに手をかけながら逃してしまい、今は控えに甘んじている選手です。しかし、原監督がキッチリ選手の状態を見極めて起用するものですから、一度チャンスを逃してもまたチャンスが来ると信じられるんです。いつ出番が来てもいいように、しっかり準備をすることができる。ベンチの選手全員が、自分の出番を待ち望んでゲームに参加できる。これは大きいですよ。
ここに来て、チームが一丸になってきました。絶対に優勝が必要な首脳陣と、優勝が欲しい選手たちの距離が縮まってきたような、誰もが優勝を不可欠だと思っているような空気を感じます。
先ほどお話しした25日の中日戦、あの大逆転劇はそう簡単にできるものではありません。ラミレスが打ったとか、小笠原が打ったとかではなく、亀井や古城の力で勝ったのが大きいんです。この試合が、巨人にとっては大きな分岐点になるんじゃないかなと思います。現在、巨人は8連戦中。連戦の最後は阪神との直接対決3連戦です。まさにここが正念場でしょう。
もちろん、脇役が活躍すればそれだけでいいわけではありませんけど、主役の方も調子を上げています。小笠原は、今年は絶対3割は打てないだろうなと、私は思っていました。しかし、必死でもがいて、懸命に食らいついて、状態を上げてきました。オールスター前は2割7分台だった打率が、今や2割9分半ば。ケガも大分よくなったんでしょう、夏場に入って打ちまくってますよ。
実はこの前東京ドームに取材に行った際に、小笠原に「もう40試合しかないからガンバレ」と声を掛けたんです。すると小笠原、「え? そうですか。もう40ですか」と返してきました。いま何試合を消化しているか、小笠原はわかっていないんですね。それぐらい、目の前の試合、1つ1つの試合に必死なんです。恐らく、スポーツ新聞なんかも読んでいないと思いますよ。
上原と阿部、五輪組も帰ってきましたし、巨人はようやく戦う態勢が整いました。前半のような戦いぶりでしたら、阪神を捉えることなんかできなかったでしょうけど、今の巨人なら脈があります。
かつて長嶋さんは、11.5ゲーム差をひっくり返して「メークドラマ」を達成しました。そのメークドラマより開いていたゲーム差を、ひっくり返すことができるか。これから1ヵ月の巨人、目が離せませんよ!
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第27回 メークドラマの再現なるか?
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