注目情報

国内プロ野球 コラム モノが違いますね

第30回 西武優勝と岸の「緩急」

 アジアシリーズも終わり、今年のプロ野球も全て終わりました。西武が昨年5位の屈辱を跳ね返し、日本一、そしてアジア一の栄誉に輝きましたね。日本シリーズから少し時間が経ってしまいましたけど、今回はその西武のお話をさせていただきたいと思います。

 今年の西武を象徴するものは若さと勢いだと言われています。1番から4番、片岡・栗山・中島・中村、この4人は中島が26歳、残りの3人は25歳です。投手陣で言っても、涌井と岸の二枚看板はそれぞれ23歳と24歳。大変若いチームであるのは、今更言うまでもないかもしれませんね。

 西武を語る上で忘れてはならないのは、去年5位に終わったチームであるだけでなく、そこからカブレラと和田一浩というプロ野球を代表する大砲が抜けたことです。それ以外にも、松井稼頭央や豊田、松坂といったそうそうたるメンバーがかつてはチームにいたんです。そうした主力が抜けても、すぐに若手が穴を埋める活躍をするのが西武の強さです。

 初めに名前を挙げた4人の若手で言えば、片岡は2年連続盗塁王に加え、栗山と最多安打も分け合いました。中村はローズやカブレラを抑えてのホームラン王。あの秋山幸二の持っていた日本人チーム記録の43本塁打を更新して、46本ものホームランを放ちました。中島は終盤に失速して惜しくも首位打者を逃しましたけど、わずか7毛差での打率2位です。

 こうした若手を積極的に起用した渡辺久信監督の手腕も評価するべきでしょうけど、私はそれ以上に、その若手たちの猛練習を評価させてもらいたいですね。去年5位に終わった屈辱を受けて、その負けた時点からずっと、今シーズンのために猛練習を積んできたから今があるんです。彼らにとっては、カブレラや和田がいなくなったのは、逆にポジションが空くチャンスだという思いがあったんじゃないでしょうか。既に主力だった中島にしてもクリーンアップを不動のものにするチャンスでしたし、そういう気持ちで猛練習を積んで、今年の結果があったんだと思います。

 この、主力の穴を必ず誰かが埋めるという構造は、シーズン中にも見られました。今年の西武は、ケガ人や五輪代表など、選手の離脱が結構あったんです。それでも時期を変えて色々な選手が活躍して、シーズン通して好調だったと思います。春先はG.G.佐藤やブラゼル、中盤はボカチカ、そして終盤には岸孝之や中村、後藤武敏。CSでは涌井が圧倒的なピッチングを見せ、そして日本シリーズでは平尾が一躍全国区になる大活躍です。日替わりヒーローというのはよく言う言葉ですけど、今年の西武は時期替わりでヒーローが生まれた感じです。

 もちろん忘れてはならないのが、日本シリーズでの岸の感動的なピッチングでしょうね。第4戦での完封劇もすばらしかったですけど、何と言っても中2日でリリーフした第6戦が感動的でした。

 私は色々な所で、西武が4勝2敗で優勝という予想を立てさせてもらっていました。しかし第5戦、涌井が終盤に打ち込まれて逆転され、巨人が王手をかけて私の予想は崩れ去ってしまったんです。

 その試合、巨人の逆転の口火を切ったラミレスのツーベースなんですけど、皆さんも鮮やかに記憶されてると思います。ラミレスが走りに走って二塁を陥れた、あの走塁は確かに見事の一言なんですが、それ以前にあのピッチャー返しが二塁ベースに当たって、誰もいない右中間に転がるなんていう偶然が巨人の優勝を後押ししているような感じでした。

 昔ヤクルトにホージーという外国人がいまして、このコラムをご覧になっている方はご記憶の方も多いと思いますが、97年の日本シリーズですごいプレーを見せたことがありました。1アウト満塁で、内角のボールをグリップエンドに当ててしまい、それがコロコロッと転がってタイムリー内野安打になったというプレーです。いま中日の監督をやっている落合博満が「秘打」なんて言っていましたけど、全く見たことがないような、野球の神様がヤクルトの日本一を望んでいるようなプレーでした。

 ラミレスのツーベースは、そのホージーの秘打を思い出させるような、一気に巨人に流れが傾くプレーだったと思います。その巨人の流れを一気に断ち切って西武に日本一をもたらしたのが、第6戦の岸の熱投、そして岸を起用した渡辺監督の采配の見事さだったと言っていいでしょう。

 岸を見て、改めてピッチングとはどういうものなのか教えてもらった気がします。ピッチングとは、コントロールに加えて、何よりも緩急だと。

 最近のプロ野球は、メジャーからカットボールが輸入されてから、ツーシームなどの動く速球、いわゆるムービングファーストボールが主流になっていました。速い球で押して、ファウルを打たせ、空振りを取り、最後はフォークというような「急」のみのピッチングスタイルですね。そういう現代野球に、岸が日本古来の「緩急」を使って一石を投じてくれました。

 すばらしい腕の振りから繰り出されるあの緩いカーブによって、全てのボールが引き立っていました。もともと岸はプロに入った時からカーブを投げていましたけど、去年の岸のカーブは、どちらかと言うと「見逃しを取る球」だったように思います。打者の意表を突いて、打ち気を逸らすような球ですね。それが今年になって、「空振りを取る球」にまで昇華されました。岸は、ストレートやチェンジアップ、スライダーなども一級品です。しかしカーブに限って言えば、超一級品と言っていいでしょう。

 最近ではカーブの使い手も少なくなり、辛うじて岡島秀樹ぐらいしかカーブを主戦力としているピッチャーはいなくなってしまいました。昔は江川卓や桑田真澄、星野伸之、それに私もボールを受けていた川口和久や北別府学、佐々岡真司などがいましたけどね。ここに並べたピッチャーたちは、誰もが一級品の投球術を持ったピッチャーだとわかるでしょう。彼らに匹敵するような、唸るような投球術を岸には見せてもらいました。

 このすばらしいピッチングで自信を得た岸を、来年パ・リーグのバッターたちはどうやって攻略するんでしょうね? あのカーブをどう打つか、もう研究を始めている選手たちもいるでしょう。

 とにかく、今年の西武はすばらしいシーズンでした。西武の選手たちは今ごろ契約更改を楽しみにしているでしょう。というわけで、次回は契約更改について、私の体験談なども交えながらお話ししたいと思います。お楽しみに!

[PR] お役立ち情報

MSNスポーツ - コラム一覧

PR

このページ上に表示される記事内容、あるいはリンク先の記事内容はMSNおよびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。