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第31回 契約更改の裏側

 今オフの契約更改交渉も大体終了しました。今回は、前回の予告通り契約更改についてのお話をさせていただきたいんですが、ちょうど25日に阪神の金本が更改を行いました。日本人選手最高年俸の5億5千万円ですよ。勿論、この金額は推定の数字でしかないんですけど、この推定の数字もかなり正確な部分まで推定しているものです。皆さん、5億円ですよ。100年に一度の大不況と言われる中で、この夢のような金額。私なんかでは一生かかっても稼げないようなお金です。

 この契約更改交渉というものは、野球選手にとって一年に一度のチャンスです。球団に自分の主張をして、売込みをして、球団から評価をもらう。言いたいことを言えるのはこの契約更改の席だけと言っても過言ではありません。

 活躍すれば年俸は上がりますし、中にはポンポンと順調に増額していく選手もいますけど、その陰にはチーム辺り7~8人、野球界を去っていかなければならない人もいます。最近では普通の会社でもリストラなどがあり、終身雇用というものは無くなってしまいましたけど、プロ野球界はそれより短いスパンで人の入れ替わりがあります。夢のようなお金を手にする人がいる反面、廃業しなければいけない人もいる厳しい世界です。

 この契約更改、やはり納得してハンコを押すべきで、納得できないまま契約すると翌年に響いてしまうものです。納得して、気持ちよくハンコを押して、それで年を越したいものですよ。

 私は現役の頃、15年間で3回ほど保留しました。初めはワケもわからず、何となく保留してみたという程度でした。2回目は1980万円を提示されて、どうしても2000万にしてもらいたくて保留しました。と言うのも、当時は落合博満さんが初めて1億円プレーヤーになったとか、そういう時代ですから、カープには2000万円のキャッチャーはいなかったんです。どうしても2000万円キャッチャーになりたかった私は、2回目の交渉で20万円持参しました。この20万を球団にあげるから、20万プラスして2000万円にしてくれと。結局球団の首脳がオーナーと相談して、晴れて2000万円でサインできました。

 3回目の保留の時は、提示されたのが3300万円でした。まだ古田敦也くんが出てくる前で、当時はキャッチャーの評価が低く、私がキャッチャーの重要性を説いても聞いてくれないという状態だったんです。その時の球団代表だった人が昔ピッチャーをやっていて、昔のチームメートのキャッチャーに聞いてみたらキャッチャーの重要性がわかったらしく、2回目の交渉で300万円上乗せしてもらいました。

 保留した時に球団によく言われたのは、「保留しても査定は変わらない」ということでした。それは至極当然なことで、球団も綿密な査定をして金額を提示しています。誰かがゴネたからと言って、ハイそうですかと金額を変えられるわけもないんです。

 今年で言えば、西武で日本シリーズMVPに輝いた岸孝之が保留をしています。去年が3600万で、今年は7500万を提示されていると報道されていますけど、球団としては真っ当な評価だと思います。

 ただ、岸本人としてはリーグ内の同じぐらいの実力者として、去年新人王を争った田中マー君がいて、そのマー君が去年6000万も貰ったことを考えると、今年は年俸を上げたいという気持ちがあるでしょう。

 この岸の気持ちもわかります。球団によって経営状態が違いますから一概には言えませんけど、やはりリーグ内で自分と同じぐらいの実力の選手を見つけて、年俸を比較するということはあります。私も現役時代は、巨人の山倉や近鉄の梨田さんと比べたりしてました。実際、梨田さんが「なんでカープの達川と同じ額なんだ」と言って保留した、なんて記事も見ましたからね。

 そう考えると、マー君よりも成績が良くて、今年は日本シリーズでも自信を持った岸の気持ちはよくわかるんです。

 しかし、これも球団に言われたことなんですが、選手は3年通して活躍して初めて一人前なんですね。3年やったトータルの金額を3で割った数字が、球団の評価だと。私はそういう風に言われました。ですから、2年目で保留するというのは余りいいことではないと思います。岸くんも、今年に劣らない活躍を来年見せて、それで気持ちよく1億円を突破すればいいんじゃないでしょうか。

 僭越ですが私が査定させてもらって、7750万円でどうでしょう。お互いの言い分、気持ちもよくわかりますんで、間を取ればいいかなと。金額はともあれ、納得するまで球団と話し合って、来年の糧にすればいいんです。気持ちよく年を越したほうがいいですから。

 皆さんも今年のことは今年で終わらせて、いい年越しをして下さい。今年も一年間ご愛読ありがとうございました。それでは皆さん、よいお年を! また来年お会いしましょう。

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