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第33回 新監督と新人たち

広島カープ黄金期の名捕手・達川光男氏

 2009年も自主トレ、キャンプが終わって行き、いよいよ実戦モードに入ってきました。今年はWBCがあるということで主力選手が早めの調整をし、それに釣られて他の選手たちも調整のペースが上がっています。紅白戦も例年なら20日ぐらいに始まるものが、今年は15日ぐらいから始まっていますね。どのチームもハイペースで、開幕に向けての準備を進めています。

 今年は新監督が二人います。阪神の真弓監督と、ソフトバンクの秋山監督です。二人とも、どこか似通った部分があるなあと私は思ったりするんですが、皆さんどうでしょう? 二人とも俊足強打で鳴らした外野手で、私みたいに冗舌ではなくクールですけど、プレーは派手。おまけに細身でハンサムで、人気も抜群という二人です。

 秋山監督との一番の思い出は、なんと言っても現役時代日本シリーズで対戦したことですね。86年の日本シリーズ第8戦、6回に当時の秋山選手が同点2ランを放ち、バック宙でホームインしたシーンです。今でもご記憶の人が多いでしょうけど、私にとってもあのシーンは衝撃でしたよ。

 何でも、日本一になったらまたあのバック宙をやりたいと言っているみたいですね。運動神経抜群と言われた秋山監督ですけど、さすがにもう46歳ですからね。本当にできるんでしょうか? 少し心配です。

 秋山監督のキャンプを見せてもらいましたけど、新人とは思えないほど落ち着いていましたね。しかしその反面、練習はものすごく熱かったですよ。昨年最下位からの巻き返しを期待できます。秋山監督にとっては、現役時代から去年のコーチ時代まで合わせて、最下位という経験は初めてだったそうです。決して表情に出さない人ですけど、心の中では絶対に巻き返すという思いが強いでしょうね。

 一方の真弓監督ですが、私はあの人を現役の頃からよ~く知っています。皆さんご存じの通り、私は現役時代キャッチャーとして、ありとあらゆるバッターに囁きました。でも、真弓監督は何を言っても反応しませんでしたね。本物のポーカーフェイスでした。

 真弓監督は男前ですけどヒョロッとしていて、一見弱々しくも見えます。でも、彼は本当に肚が座っているんですよ。そう言えば、こんな諺があります。鷹の立つや眠るが如く、虎の行くや病むに似たりと。鷹や虎は機敏で鋭い能力を隠し、獲物を狙っているという意味です。鷹の秋山監督、虎の真弓監督、二人ともまさにそうですね。

 果たして二人がどんな采配でチームを導いていくのか、今から楽しみです。

 さて、新監督の話はこれぐらいにして、新人たちにも目を向けたいと思います。

 去年は中田翔の話題で持ちきりでしたけど、今年のルーキーは何と言っても巨人の大田が大きく取り上げられていますね。

 他にも、横浜でしたら即戦力外野手の松本啓二朗や早稲田であの斎藤佑樹の女房役を務めた細山田武史がいます。広島カープにはやはり外野手の岩本貴裕やピッチャーの小松剛、中日でしたらこれまた外野手の野本圭が評判です。

 パ・リーグに目を向けると、西武のピッチャー野上亮磨がなかなかいいと聞きます。ロッテで下位指名だった香月良仁はスーパーで働いていたりもしていたそうですけど、これまたいいピッチングをしています。

 今年も面白いルーキーたちが色々いますけど、でもやっぱり大田の話をしましょう。残念ながら攻守ともにまだ今ひとつでファームに落ちてしまいましたけど、それでも彼の潜在能力は凄いと私は思います。高校生ながらキャンプで1日も休まなかったことも評価してあげたいですね。

 大田の第一印象は、まずは体が大きいということでした。手を比べさせてもらったんですけど、これまた大きくてビックリしました。松井秀喜や新井、村田など、私も色々な選手を見てきましたけど、彼らホームランバッターに共通することは骨太で、体が頑丈だということでした。遠くへ飛ばす天性のパワーを持っている選手たちです。

 大田は、彼らと同じ素質を持っていると私は思います。後は、そのパワーをいつでも発揮できるための技術をつけるだけです。そのためには練習が必要で、練習するためには強い体が必要なんです。

 去年ブレイクした坂本勇人がいい例ですけど、彼も体が強くて、1年間フル出場しました。坂本に続くと言われている中井大介も、去年はファームでずっと練習し、二軍の試合で4番を打ち続けました。一度腰が張ったことがあったそうですけど、それでも練習を休まなかったそうですよ。

 こう言う体の強さがあって、ひたすら練習を続けていけば、天性のパワーが開花して必ずモノになります。

 凡事徹底、という言葉があります。平凡なものの積み重ねが、非凡なものへと変わっていくんです。練習というのは平凡なものです。でもそれを積み重ねていくことで、いつしか非凡な、偉大な選手へと変わっていくことができるんです。

 イチローは少年時代、正月を除く364日間バッティングセンターに通いました。エジソンは、「天才とは99%の努力と1%の閃き」と言いました。

 大田選手にも、そうした平凡な努力の積み重ねで、大きな大きなバッターになってほしいですね。

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