球界には、多くの好投手がいる。その中でも、ナンバーワンはダルビッシュであろう。なぜナンバーワンかと言うと、球場全体の雰囲気を徐々に制圧し、お客さん、ファンも含めて、ダルビッシュの一挙手一投足に釘付けになってしまうからだ。勝っても負けても、その劇場はダルビッシュが間違いなく主役である。その中で、各チームのエースと呼ばれる選手たちがダルビッシュの背中を追いかけている。その両者の投げ合いになった時は、楽しくて仕方ないゲームを見ることができる。
例を取ってみれば、札幌ドームで開幕直後に行われた日本ハムvs西武戦で、日本ハム・ダルビッシュ、西武・涌井という投げ合いがあった。ダルビッシュは立ち上がりからその球威と技で球場全体を制圧していく。一方涌井はかわしながらも、ダルビッシュの独り舞台にはさせないという気迫があった。両者の投げ合いは、九回を投げ終わって0-0という一歩も譲らない状態であったが、ダルビッシュが先にマウンドを降りることになった。ダルビッシュ曰く、「この試合が全てではない。自分の仕事はできたと思う」。
その後も涌井は投げ続けたが、ダルビッシュが先に降りたためか、そのモチベーションは明らかに下がってしまう。延長10回、サヨナラという形で負け投手になった。ダルビッシュはチームが勝ったことは嬉しいが、涌井に負けがついたことが申し訳ないという談話を残した。これは好投手ならではの気持ちがあったのだろう。自分が勝ったわけではないのに、投げ合った相手は負けてしまった。だから申し訳ないと思う。そういうことだろう。それにしても、ダルビッシュが降りた途端に明らかにモチベーションが下がる涌井を見た時、改めてダルビッシュの凄さを見たように思った。
さて、5月7日、場所は西武ドームに変わったが、両投手の投げ合いをまた見ることができた。開幕から飛ばしてきたこの両投手は、少し疲れの色を見せながらも、意地の張り合いが感じられた。涌井は立ち上がり、ボールが高く日本ハム打線に捉えられる。しかし、決定的な追加点は与えない。一方ダルビッシュは立ち上がりから快調に飛ばす。しかし、油断もあったのだろう。ノースリーから中村にホームランを許した。これで目が覚めたか、ここからダルビッシュはエンジンをかけ始めた。涌井は調子そのものも上がってこないが、やはり技術があるのだろう。6回に迎えた最大のピンチ、1アウト二、三塁を無失点で切り抜ける。この粘りが、徐々にではあるが、ダルビッシュにプレッシャーを与えていった。
スコアは3-3のまま、今度は涌井が先にマウンドを降りる形になった。ダルビッシュの投じる球が少しずつ外れていく。明らかに札幌ドームでの涌井と、この時のダルビッシュを照らし合わせることができた。
結果、今度はダルビッシュがサヨナラを喫した。前回同様、今回も二人の間に直接の勝敗はつかなかったわけだ。好投手という名の投手たちは、やはりドラマを作ってくれる。札幌ドームで行われた岩隈とダルビッシュの投げ合いも、二人とも5回までノーヒットを続け、ドラマを演出した。あれも、見応え十二分の試合だった。
では、好投手というのはどういった要素が含まれるのだろう。私は、まず精神的にバッターより優位な気持ちでマウンドにいれるということを挙げたい。バッターも気迫を持って打席に入ってくるが、それを上回る気持ちがマウンドにある。簡単に言えば、怖がらないということだ。プライドも高い。また、技術も高く、色々な駆け引きができる。一つの特徴で投球の幅を広げていくことができる。
例えばダルビッシュは、名前がある。凄いイメージを作り上げている。涌井は、シュートがある。岩隈にあるのはキレだ。こういった有形無形の、相手バッターが嫌がる特徴を持ち合わせているのも、好投手の条件だろう。各チームのエースたちがみんなそうであれば、野球はもっと楽しいだろう。代表されるのはこの3人と、楽天の田中だ。今、日本のエースと呼ばれるピッチャーは誰が見てもダルビッシュだ。しかし、これを越えていく可能性があるのは、田中将大だと私は見ている。
あのコの気迫、勝負強さ、そういったものは桁外れだと思う。野村監督が「神の子」とおっしゃったが、私も同意見だ。普通にロッカーで話すと屈託の無い笑顔を見せるが、マウンドに上がると人が変わる。また、一年目に課題となった細かい技術を、もう今年は克服している。例えば、ランナーが出たときのクイックモーション。そういった、課題を克服するセンスも申し分ないと私は見ている。チームメートからの信頼・人望も含めて、ダルビッシュの次は田中が来るだろう。
今年、楽天はクライマックスシリーズへのチャンスを得ようとしている。この大舞台での田中のピッチングを、是非見てみたいし、ダルビッシュとの投げ合いもその舞台で見たいものだ。
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国内プロ野球 コラム 野球の神髄
第2回 好投手の投げ合い
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