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第11回 キャンプイン

 春のキャンプは秋と違い、選手の意思統一や調整を行っていくのが主目的だ。そのため、チームごとにチーム状態に合わせ、それぞれ違ったキャンプになって当たり前のはずである。しかし、2日から6日までヤクルト・日本ハム・中日・阪神・広島・楽天の6球団のキャンプを見てきたが、その中でこれは面白いと思った球団が無い。ヒルマンが就任した時の日本ハムは、プレーの最中などでも動きを止め、一つ一つ説明や指示を出していて「面白いな」と思ったものだが、そういったキャンプが最近少ないのは物足りない想いがする。

 キャンプの一日はこのような具合だ。まずはアップを行い、ストレッチをする。キャッチボール、全体ノックと続く。ピッチャーはピッチングへと向かい、野手は連携、シートノックの長いバージョンを繰り返し行う。終わればフリーバッティング。確かに野球にはそういった練習しかない。しかし、どこを見ても同じようなテンションでしかやっていないのはどうか。

 例えば弱いチームであれば守備に時間を十分に割くとか、また打力の弱い球団は徹底的に打たせるとか、そういった球団ごとの特性が見受けられない。昨年優勝した西武ライオンズは、アーリーワークと言って朝食前に体を動かし、ウエートトレーニングやティーバッティング行ってから朝食を摂った。そういう新しい練習、取り組みが日本一という栄冠をもたらしたと言っても過言ではないだろう。

 メジャーではほとんどアーリーワークを取り入れ、キャンプを行っている。昨年までの西武の打撃コーチであるデーブ大久保に会うことができた。デーブはこのように言っていた。

 「日本では、全球団朝ごはんは義務付けされていると思う。でも、摂った後でウォーミングアップをするのであれば、その量も考えながら食べなければならない。アーリーワークの良さはそういうことを考えずに済み、十分な栄養補給が朝食でできることもメリットの一つだと思う」

 昨年あれだけの成績を残したチームのマネを他のチームがしないというのは、どういうことなのか。日本プロ野球が誕生し、半世紀以上経つが、そのキャンプのスタイルを思い切って一変させたのが西武だ。やはり時代が変わればその考え方が変わる。科学が進歩すればその科学を取り入れる。細かいところではそういう取り組みも存在するが、ここまで大きく練習を変えたチームは無い。

 強いチームと弱いチームでは、キャンプの厳しさや目標とする地点に確実に差があるはずだが、今回見た6球団について見れば、全くと言っていいほど代わり映えしない。先に述べたヒルマンの見事なキャンプで、日本ハムは見事躍進した。そういうチームが他にも出てきていいはずだ。

 私が見てきたのはキャンプ前半であるし、あまり飛ばしていなかったのかもしれないが、このチームは違うぞという雰囲気ぐらいは出ていても良いのではないか。

 昔阪急ブレーブスが存在したころ、素晴らしいキャンプをしていた。活気があり、若手もベテランも無く、容赦なくノックの雨を降らせていた。これは阪急の名物になっていたが、とにかく時間も長く、全員が同じグラウンドで必死の形相で球を追いかけていたのが阪急のキャンプの伝統であった。

 こういった全員で何かをする、チームの和を作るということが重要だ。確かにミーティングでそういった和を形成することもできるが、みんなで球を追い、汗を流し、声を掛け、ドロドロになってやる泥臭いキャンプがあってもいいような気はする。昨年ダントツの最下位になった横浜などはまだ見ていないが、こういったキャンプをしていてほしいものだ。

 とにかく、春のキャンプと秋のキャンプは違う。秋のキャンプは技術的なことはもちろん、体力面もとことん追求していくキャンプだ。ケガ人が出ることも多い。やはり弱いチームは秋のキャンプの延長で春も臨み、ケガをした落ちこぼれは置き去りにするというぐらいのキャンプをしなければならない。

 春のキャンプはおおよそのレギュラーと若手に二分割される。大体投手では9人ほどはベンチ入りが確定している。実績もあり、ネームバリューもある選手たちだ。開幕時、投手は12人ほど登録されるが、その残りの3議席を若手投手陣が狙ってくる。

 一軍登録が28人。12名を投手として、16名が野手である。キャッチャーはほぼ3人。あと13の枠を内外野で分ける。キャッチャーを除き、7つのポジションがほぼ埋まっている。残る枠は6つ。これを奪うために若手がアピールしてくる。

 確かにキャンプで目立ってもオープン戦で結果が出なければ二軍行きだ。しかしキャンプでのアピールも重要であることは言うまでもない。しかし、今の若手たちは何か大人しい。もっともっとアピールしてもいいんじゃないかと思う。声だけでも張り上げる、そうやって目立つという選手がなかなか目に付かなかった。

 テレビカメラを向ければパフォーマンスをしてくれるサービス精神はあっても、肝心の職業でそういったアピールが出来ないのも、現代っ子の特徴ということなのだろうか。

 私の体験談で言えば、2年目のキャンプでノドが枯れるまで声を出し、日常の会話もできないほどだったのを憶えている。そういった努力も功を奏し、その年にレギュラーになれた。今の12球団の首脳陣は私と同じ世代なのだから、そういう声を出す選手がいれば自分の現役自体も思い返し、印象に残るだろうと思うのだが。

 野村さんも言っていた。指示待ち症候群の集まりでは何も生まれてこないと。私も同感だ。一生懸命やればやるほど人は疑問に当たるだろう。疑問に当たる度に、発想が生まれてくるものだ。その繰り返しで、人は成長していくと思うが、そういった疑問、発想、成長が見て取れないのは非常に寂しかった。

 現在の若手の選手たちは、いい教育も受けて知識もあり、人に聞くとか人を頼るとかをしなくても成長していけるのかもしれない。これも世代のギャップで、彼ら若手たちは私たちとは違う形で成長していくのだろうという風に期待をしたい。

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