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『戦力分析:トヨタ』早めの開発が功を奏し、最大のチャンス到来

 アメリカ発の金融危機による世界恐慌の影響を受けた自動車産業界。その中で戦後初の赤字に転落したトヨタが被った損失は多大だった。そのため、トヨタは1月15日にドイツ・ケルンのTMG(トヨタ・モータースポーツ・GmbH.)で予定していた新車発表会を急きょ中止。インターネット上で新車を発表するにとどめた。

 予算が大幅に削られていく中での新車発表となったトヨタだが、新車『TF109』にはその影響はほとんど見られなかった。『TF109』の開発のスタートは07年10月。昨年の早い段階から風洞実験が行なわれ、年末には新車はほぼ完成していたからだ。今年最初の合同テストとなった1月19日のポルトガル・アルガルベには2台の新車を持ち込み、1台はKERS(運動エネルギー回生システム)専用車両としてノートラブルで稼働テストを完了させている。

 こうしたトヨタの早めの準備は、テスト走行での結果にも影響を与えていた。最初のテストが全日ウェットコンディションとなったため、今年初めてドライコンディション下でテストが行なわれたのはバーレーン・サキールとなったが、そのバーレーンの合同テストでティモ・グロックがいきなりトップタイムをマークするのである。2週間に渡って行なわれたバーレーンテスト。2週目にもグロックがトップタイムをマークし、ともにバーレーンでテストを行なっていたフェラーリ、BMWザウバーというトップチーム勢を慌てさせた。

 トヨタの順調な仕上がりぶりは3月最初の合同テストとなったスペイン・ヘレスではっきりと現れた。トーロ・ロッソとブラウンGP(旧ホンダ)を除く8チームが集結。その2日目(ウエット)と3日目(ドライ)でグロックが再びトップタイムをマークするのである。ヘレスでのテストは今年投入されるタイヤ4種類と2010年から投入予定のタイヤウォーマー禁止下で投入されるタイヤのテストも同時に行なわれていたため、トップタイムだけによる単純な比較はできないものの、少なくとも現時点で今年のトヨタ『TF109』が02年参戦以来、もっともコンペティティブな出来となっていることは間違いない。

 トヨタが今年これほどまでに浮上してきた理由は、レギュレーションが大きく変更されたことは言うまでもない。レギュレーションの変更自体はどのチームも平等に適用されているのだが、新レギュレーションに合わせた開発の方法はチームによって異なる。現代のF1マシンを開発するにあたって、もっとも重要なツールとなるのがCFD(コンピュータによる計算流体力学)と風洞施設。TMGには同スペックの風洞施設が2基ある。08年の開発を止めることなく、09年の開発を進めることができたのだ。

 多くの場合、08年の開発を途中で断念して09年の開発をスタートせざるをえなかった。しかし、それでは開発の継続性がなくなる。また08年にタイトル争いを行なっていたトップチームは、終盤まで開発を続けざるを得なかったため、そのしわ寄せが09年マシンの開発の遅れとなって現れている。マクラーレンは納得のいくリアウィングが見つけられず、いまだに08年型(09年適合外)リアウィングを使用しているし、フェラーリは3月になってようやく09年型エンジンカウルを準備してきた。

 もうひとつトヨタの開発が順調に進行できた理由がある。それは早くからKERSの開発を断念したことだ。前述のように、トヨタが今年最初のテストでKERSを搭載したクルマでのテストを行なっている。しかし、トヨタのKERSテストはそれが最後。ライバルチームがKERSに関わるトラブルに頭を悩ませている間に、トヨタはトラブルフリーで周回を重ね、信頼性を確立したのだった。

 速くて、信頼性が高いマシンを手にすれば、狙うは表彰台の頂点。チャンスはトップチームが追い上げてくる前のシーズン序盤。第4戦バーレーンGPまでではないだろうか。

 いずれにしても、スーパーアグリとホンダが撤退し、日本勢としては1チームだけとなったトヨタ。世界のどこかで君が代の音を響かせてほしい。

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