59歳トム・ワトソン(米)が32年ぶりにターンベリーでの勝利を狙った今年の全英オープン。72ホール目で力尽きたワトソンに代わりクラレットジャグを手にしたのは、伏兵スチュワート・シンク(米)だった。
最終組の3つ前、ブライス・モルダー(米)との目立たないペアリングでひっそりスタートしたシンクは、ターンベリー独特の風に翻弄されバーディとボギーが交互にくる展開が続いた。難易度の低い17番パー5でもスコアを伸ばせず、通算1アンダーで最終18番へ突入。「これで逆に開き直った」シンクは、グリーン右奥にパーオンすると長いバーディパットを強気にねじ込み渾身のガッツポーズを決めた。
「(バーディが)必要だとは気付いていなかった。でも、このパットが重要だということは理解していたよ」。ワトソンが18番でまさかのボギーを叩くと、シンクに初めてチャンスが訪れた。
72ホールを戦い抜き疲れの色を濃くする老兵に対し、36歳と脂の乗っているシンクはプレーオフ1ホール目でパーを奪い、ワトソンを1打リード。1打差のまま迎えた3ホール目でワトソンがティーショットを左の深いラフへ入れて重圧から少し解放されると、セカンドショットをチャンスに寄せてバーディを奪取した。その時点で2人の差は「4」ストローク。勝利を確信したシンクは、ギャラリーからスタンディングオベーションで迎えられた最終ホールも手を休めることなく、ベタピンにつけてバーディフィニッシュ。念願のメジャー初Vを達成した。
「“トム・ワトソン”は32年前と同じプレーを今週も見せてくれた。ボクは、あのワトソンと優勝争いをできたことを誇りに思っている。(プレーオフは)夢のような時間で、ボクにとっては神秘的な物語だったよ」とシンクはゴルフを始めるきっかけとなった憧れの人ワトソンとの激闘を振り返った。ターンベリーで開催された全英オープンを制したアメリカ人選手は、これが2人目。1人目は奇しくも32年前のワトソンだった。
1997年にツアー初制覇を遂げると、00年、04年(2勝)、08年と順調に勝ち星を積み上げたシンクだったが、堅実で地味なプレーぶりからか中堅選手としての扱いしか受けていなかった。たしかに04年にWGCで勝ったものの、メジャーではあと一歩及んでいなかった。「ボクはタイガー(ウッズ)や(フィル)ミケルソンとは違う。普通の選手なんだ」。
自らを平凡と語るシンクにもメジャー制覇のチャンスはあった。それは8年前の全米オープン。最終日の18番で50センチ弱のパットを外し、レティーフ・グーセン(南ア)とマーク・ブルックス(米)に1打届かずプレーオフへ進出できなかった。
「あれから長かったから本当につらかったよ。でもこれがゴルフなんだよね」と苦笑したシンク。「やっとその呪縛をふりほどくことができた。これからがボクのゴルファー人生の新しい幕開けだ」。全英オープン制覇で培った経験と、ワトソンから学んだ哲学を糧にしたシンクがさらなる飛躍を遂げるのは間違いない。
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伏兵S.シンク、憧れの人T.ワトソンの夢砕きクラレットジャグ獲得!
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