さわやかな朝の風に柔らかな日差し、気候もすっかり秋めいて、競馬界にもいよいよG1シーズンが到来。今週末、中山競馬場のスプリンターズSがその口火を切る。日本の競馬界は短距離から長距離に至るまで停滞期にあるが、とりわけスプリント~マイル路線のタレント不足は深刻だ。その状況下、前年の覇者スリープレスナイトが電撃引退。一気に混迷の度合いを増し、スプリンターズSは主役不在の戦いとなった。混戦から抜け出すのはどの馬か、勝負の行方を占う。
スプリント路線の低迷を象徴するのが著しいスローペース化。近年のスプリント重賞は前半600m通過に33秒台後半の時計を要すことがめずらしくない。「サマースプリントシリーズ」の1200m戦4鞍のうち、32秒台で淀みなく流れたのは北九州記念(32秒7)のみ。残りの函館スプリントSとキーンランドC、セントウルSはいずれも33秒8を要し、4角2番手通過の馬が押し切っている。ちなみに、6月のCBC賞は33秒7。最終週の荒れ馬場でのものだけに、先の3鞍にくらべれば厳しいラップで、後方待機馬が上位を占めた。とはいえ、クビ差の2着は4角を3番手で通過した3歳馬で、図らずも古馬勢の層の薄さを露呈する形となった。
高松宮記念の600m通過は33秒1。夏場のG3より速いが、G1なら厳しいラップでもなく、ペースを握ったローレルゲレイロが、そのまま先頭でゴールした。そのローレルゲレイロは、昨年暮れの香港スプリントで8着に完敗。ハナ面を並べてトウショウカレッジが入線(9着)したが、同馬は先行馬ペースの高松宮記念でも4角10番手から4着に食い込んでいる。ローレルゲレイロとの着差は0秒3。両馬の力量はほぼ互角と見てよく、それが国内トップクラスと世界との差(=香港で完敗)ということになる。
函館スプリントSとキーンランドCは力の要る洋芝コースが舞台だが、セントウルSは軽い野芝(今秋の阪神開催は洋芝のオーバーシードなし)。しかも、馬場状態が絶好の開幕週だったことを考慮すると、前2鞍より格上のG2でありながら、最も楽なペースだったことが判る。そのセントウルSで逃げたのは高松宮記念と同じくローレルゲレイロ。ニラみの利く鞍上が、スプリンターズSでもハナを主張する可能性が高い。よって、一連のスプリント重賞と大差のないペースという前提が成り立つ。
ならば当然、ローレルゲレイロにマークは必要だが、セントウルSでは遅いペースにも関わらず逃げ脚に余裕がなく、直線でも見せ場を作れずに後退。状態ひと息の感があり、全幅の信頼を寄せるには至らない。
そこで浮上するのが、キーンランドC圧勝から臨むビービーガルダン。昨年も同じローテーションでスプリンターズSは3着に好走した。上がり馬として本番を迎えたのに対し、今年は前述のキーンランドCと阪急杯のタイトルを獲得して堂々の参戦。いずれも先行策から直線早々に勝利を決定づける一方的な内容で、阪急杯では逃げるローレルゲレイロを大名マークし、1馬身余り突き放した。高松宮記念は16着に惨敗したが、初の左回りに対応できなかったもので参考外。実績のある舞台で、かつて負かした相手が大半の今回はチャンスだ。
ローレルゲレイロのペースなら、前哨戦のセントウルSを快勝したアルティマトゥーレにも展開が向く。スプリント戦で2着に2馬身半は決定的な着差。ここでも勝機はある。ただし、前走の勝利は展開がハマった感なきにしもあらず。2番手から上がり3ハロン33秒9で突き抜けられたように、持ち味の瞬発力を最大限に生かせる展開だった。G1は微妙な出入りの連続で厳しく流れるため、同じように脚を溜められる保証はない。一瞬のキレ味が持ち味のフジキセキ産駒なら、昨年2着のキンシャサノキセキも警戒。実績十分ながら春のスランプと休養明けで人気落ち必至だけに、妙味ならこちらだ。
「サマースプリントシリーズ」を連覇したカノヤザクラだが、昨年の例からも一線級相手では力不足。サンダルフォン(北九州記念)、グランプリエンゼル(函館スプリントS)のシリーズ組も同様で、恵まれて連下があれば上々だろう。
大勢を覆すなら豪州から参戦のシーニックブラストしかない。年明けのライトニングSでG1初制覇。3月のニューマーケットHも勝って本格化を遂げた。6月には英国でキングズスタンドSも制し、今季だけでG1を3勝。グローバルスプリントチャレンジの首位をひた走っている。今回勝てば関係者に計100万ドルのボーナスが贈られるとあって勝負度合いも十分。豪州から英国へ、地球半周の遠征で結果を残しているように、空輸が不安要素になるタイプでもない。死角は末脚勝負のレースパターンと初の右回り。絶対スピードの違いで位置取りが前になることはあっても、回りの対応に戸惑う馬は少なくない。目下、豪州スプリント界は世界最強とも称されるだけに、冒頭の通り、日本馬相手なら実力は断然だが、凡走の危険もはらんでいる。
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スプリンターズS、停滞する短距離界に黒船の号砲は轟くか
中4週、叩き2戦目でピタリと照準を合わせてきたビービーガルダン。千載一遇のチャンスを生かせるか。(photo by 倉元一浩)
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