日本人メジャーリーガーの活躍を応援し、メジャーをさらに楽しむためのコラム「日本人メジャーリーガー応援宣言!」。今回は不調に苦しみ、今季2度目の故障者リスト(DL)入りとなってしまった松坂大輔投手(ボストン・レッドソックス)について取り上げることにしよう。
右肩の疲労で戦列を離れていた松坂は、復帰したあともなかなか調子が上がらず、川上憲伸投手(アトランタ・ブレーブス)との日本人対決にも敗れ、ファンからブーイングを浴びた。果たして前半戦はこのまま、自らのピッチングを取り戻せずに終えてしまうのだろうか。
メジャーリーグについて学術的な研究活動を行う「ベースボール・カレッジ」では夏休みに入った。学生たちはそれぞれの故郷に戻り、思い思いの時間を過ごしている。ある独立球団でインターンを開始したゴードンは、個性豊かな選手たちのわがままに手を焼いているようだ。
川上との日本人対決に完敗…地元で容赦ないブーイング
ウィル(独立球団GM)「ゴードン、場内アナウンスの仕事もだいぶ板についてきたようだな」
ゴードン(学生)「ありがとうございます。私にとっての夢でしたから、毎日エンジョイしていますよ」
ウィル「ほかにも仕事が多くて大変だと思うけど、ここで学んでおけばきっと君の将来に役立つからな」
ゴードン「でも、選手たちにはいろいろ文句を言われることが多いんですよ。オレの名前をコールするときはもっと派手に盛り上げろとか、入場テーマ曲がダサいから変えてくれ、とか。そんなの試合中に言われても無理ですからね」
ウィル「ティムだな。あいつ、最近は打撃がスランプなものだから、他のスタッフにも当り散らしているんだよ」
ゴードン「まぁティムについてはだいぶ慣れましたけど、最近はうちのエースのライスにも手を焼いているんです」
ウィル「ライスかい? あいつは人当たりの良いナイスガイだと思うけど、なんて言ってくるんだ」
ゴードン「オレは将来、マツザカ2世になる男だ。だからオレのことを“ライスケ”とコールしろ、って言うんですよ」
ウィル「なんだそれは。“ライスケ”なんて意味がわからんぞ、まったく。それに、最近のダイスケはとても調子が悪いからな。ライスにはしっかり、勝ち星を稼いでもらわないと困るよ」
確かに今の松坂には、昨年までのような輝きを感じることができない。5月下旬に戦列復帰し、これまで6試合に先発登板。6月2日のデトロイト・タイガース戦では待望の今季初白星をマークし、いよいよ波に乗るかと思われた。だが、それ以降は勝ち星を伸ばすことができず、6イニングを投げきった試合はこれまで1度もないという不安定ぶりだ。
そして松坂の不調が決定的になったのは、19日に本拠地フェンウェイ・パークで行われたブレーブスとのインターリーグ戦だった。今季2勝目をかけてマウンドに登ったが、いきなり先頭打者本塁打を浴びると、その後にも押し出しの四球を与えるなど初回に2失点。中盤にもブレーブス打線につかまって痛打され、5回持たずに8安打6失点でノックアウトされた。これで今季5敗目。マウンドを降りる際には、失望したレッドソックスファンからは容赦ないブーイングも浴びせかけられた。
試合後の記者会見ではうなだれ、虚ろな目で「今のままでは、先発に残る資格がない」と弱々しい声で語る松坂の姿があった。こんな“Dice―K”の姿を、いったい誰が予想したであろう。勝負に敗戦はつき物だが、甘く入ったボールを痛打されるなど、この日はさすがに内容が悪過ぎた。
一方の川上は、初回から3者連続三振を奪うなど、レッドソックス打線に付け入る隙を与えず。6回を2安打2失点と上々の内容で今季4勝目をマークしただけに、松坂の乱調がいっそうクローズアップされる結果になってしまったのだ。日本人対決を制して上昇気流へ…というシナリオは、脆くも崩れ去ったことになる。
メジャーリーグの専門ケーブル局『MLBネットワーク』のニュース番組でも、松坂の不振は大きく取り上げられていた。シーズン18勝をマークした2008年には、8試合に登板した時点では6勝負けなし、防御率2.45と最高のピッチングを見せていた。だが、今季は同じく8試合先発の時点で1勝5敗、防御率にいたっては8点台というデータの比較がなされ、今季の投球内容がいかに悪いか、浮き彫りにされていたのだ。
メジャー3年目の今季は松坂にとっても、本当の意味でレッドソックスのエースになるための大事なシーズンである。だが、今回のような背信のピッチングが続くようでは、指揮官のテリー・フランコーナ監督ら首脳陣からの信頼度もガタ落ちになっていくことだろう。同僚のジョシュ・ベケット投手と比べても、ピッチングの安定感は段違いであり、その差は広がっているような印象さえ受けてしまう。そしてベケットは、20日の同カードで9回を投げ切り、ブレーブス打線を5安打無失点で抑える完封勝利をマークした。松坂に期待するのはベケットのような快投であったはずだが、今季はまだ1度もこのような場面を見ていない。ファンのストレスが溜まるのも当然のことだろう。
松坂はWBC最大の犠牲者
ライス「おうゴードン、今日はオレが先発登板するんだ。バンバン三振を奪うから、その都度クールなアナウンスをしてくれよ。“イエ~イ、ライスケ!”って叫ぶんだぜ」
ゴードン「だから、そのライスケって何なんだよ! 意味がわからないじゃないか」
ライス「しょうがない奴だな。いいか、いまダイスケは不調に苦しんでDL入りしているだろう? オレはダイスケを本当のプロフェッショナルとしてとても尊敬しているんだ。だから少しでも励ますために、このオレが彼の分身となって活躍しようって訳さ。またオレのナイスピッチングを見れば、彼の参考になるかもしれないだろ。今夜の試合映像をDVDにして、ダイスケ宛てに送ってやっても良いぜ」
ウィル「まぁ、そんなものを送ってもマツザカが見るとは思えないけどね」
松坂を先発ローテから外し、代わって今年42歳になった大ベテランのジョン・スモルツ投手を起用する決断を下したレッドソックス。そしてMRI検査を受けた松坂は21日、右肩の不調を理由に今季2度目のDL入りが明らかになった。
特に深刻な故障が発見された訳ではないものの、今のままではチームに貢献することができず、投球内容も好転しないという判断から無念の戦線離脱になったのである。今後はどの程度の期間調整すれば、昨年のようなピッチングができるまで調子を戻せるかは分からない。だが、幸いチームはベケットら投手陣の活躍もあり、ア・リーグ東地区の首位に立っている。ここは「代役」となるスモルツに任せて、松坂はあせらずじっくりと調整を行い、自分のピッチングを取り戻すことが大切だろう。
また松坂の不調については、レッドソックスにとっては永遠の宿敵であるニューヨーク・ヤンキースでも注目しているようだ。20日に行われたヤンキース対フロリダ・マーリンズ戦を中継した、ヤンキース所有のケーブルTV局『YESネットワーク』の放送中にも、実況アナが松坂についてコメント。「マツザカは、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の最大の被害者のひとり、ということになるかもしれない。春季キャンプの期間で十分な準備ができていないときに、WBCで緊張する場面でのピッチングが続いた。彼は同大会でMVPを獲得したが、レッドソックスでは昨年のような投球ができていない」と、WBCに日本代表として参加したことが不振の原因だという分析がなされていたのである。
確かに、イチロー外野手(シアトル・マリナーズ)のようにWBCで激しく戦った日本代表選手が大会後に体調を崩し、開幕から出遅れた例がないわけではない。またWBCの開催時期については批判が多いのも確かで、多くの有力選手たちが参加を見送る理由のひとつとなっていた。しかしその一方では、イチローはすぐに調子を取り戻し、現在ではメジャートップの打率と安打数を誇るような活躍を見せている。
またヤンキースの松井秀喜外野手のように、WBCには参加しなかったにもかかわらず、なかなかエンジンがかからず以前のような活躍を見せることができていない日本人選手もいるので、必ずしもWBCだけを責任にすることはできないだろう。松坂のような超一流のプロと呼ばれる存在になれば、もはやいかなる場面でも言い訳は許されない。本当に1億ドルを費やして獲得する価値がある選手だったのか、という疑問の声を封じるためにも、今度マウンドに立つときこそ素晴らしいピッチングを見せる必要がある。メジャー生活3年目で迎えた最大の正念場を、いかにして乗り切るか注目しよう。
ところで、ダイスケならぬ「ライスケ」のピッチングは、一体どうなったのであろうか。
ウィル「どうしたんだ、今夜のピッチングは? 三振なんてひとつも取れないで、あっという間にKOされちゃったじゃないか」
ライス「いや、ダイスケのことを考えていたら、自分も打たれるんじゃないかって不安な気持ちに襲われまして…緊張して、試合前からお腹を壊しちゃったんですよね。あ、すみませんトイレに行ってきます!」
ゴードン「うーん、この調子では、彼が一流の選手になるのは遠い道のりだね」
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メジャーリーグ コラム 日本人メジャーリーガー応援宣言!

不振の原因はWBC? 野球人生最大のピンチ迎えた松坂
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