
F1マシンといえば、「走る広告塔」としてメインスポンサーのCIカラーに塗られたり、さまざまなスポンサーのステッカーが貼られているのが一般的である。しかし、アースカーにはFIAで定められているカーナンバーと、コンコルド協定で定められているホンダがコンストラクターであるという意味でのホンダの「H」のロゴと、全チームにタイヤを供給しているブリヂストンのロゴが入っている以外は何もない。リアウイングにある「www.myearthdream.com」はスポンサーではなく、このプロジェクトのコンセプトを発信しているホームページのURLである。
「メインスポンサーだったBATが2006年限りでF1から撤退するにあたって、我々は07年以降のスポンサー活動に関して多くの議論を重ねました。そこで行き着いたのは、F1マシンを広告塔にしてスペースをバラ売りする従来の手法ではなく、ホンダのF1マシンそのものをイメージ化し、それをスポンサー企業が自由に宣伝活動に使ってもらうという新しい手法でした。そのためのイメージとしては、いろんなアイディアがありましたが、自動車メーカーであるホンダとしては『環境問題』が最適ではないかと考え、その象徴として『地球』をイメージカラーにしたのです」
スポンサーのロゴがマシン上にないからといって、ホンダF1がノースポンサーで活動しているわけではない。今年も30社以上の企業がホンダF1をサポートしている。ただし、ホンダはF1マシンの表面を広告スペースとして企業に売ってスポンサーフィーを得るのではなく、アースカーをライセンス化させることで、ホンダと契約した30社以上のスポンサー企業は、このアースカーそのものを自分たちの広告キャンペーンに利用できるというシステムを確立させたのである。ちなみにこのプロジェクトの発案者は、スパイス・ガールズの生みの親であり、デビッド・ベッカムのマネジメントも手がけるイギリスの新進気鋭のマーケティング会社「19エンターテイメント」のサイモン・フラーである。
それにしても、モータースポーツと環境保護は、相反する問題のような気もするが…。
「そんなことはありません。例えば、F1は08年から燃料にバイオエタノールを5.75%混合させることになっています。さらに09年からはブレーキ時のエネルギーを利用しなければならないキネティック(運動)エナジー・リユースシステムがスタートします。わかりやすくいえば、F1版ハイブリッドシステムです。さらに2010年には排熱を再利用するシステムも導入する。環境問題に対する関心は、高まる一方です」(和田チェアマン)
このホンダのアースカーに関心を寄せているのは、企業だけではない。世界中の一般ファン、あるいはこれまでモータースポーツに関心がなかった人たちもホンダの取り組みに興味を示している。myearthdream.comでは、アースカーの表面に60万ピクセル分のスペースを用意し(2台で120万ピクセル)、1口1ポンド以上で1ピクセル(1×2mm)分のスペースを一般の人々にネット上で売るチャリティを開始。購入者は名前と決められたメッセージを書き込めることになっており、すでに多くの参加者から募金が寄せられているという。もちろん、これはチャリティなので、ホンダのF1活動に使われるのではなく、イギリスのチャリティ・エイド・ファンデーションを通して、さまざまな環境活動に使われることになっている。
青い海と緑色の大地―アースカーの表面には何の文字も見えないが、アースカーに込められたメッセージは明確にある。それが読めるか読めないか。それは、一人一人の意識にかかっている。
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