「ア・リーグ東地区とは、ニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスのこと。あとはその他大勢」。
同地区に所属する他球団のファンには叱られそうだが、プレーオフ進出争いに関する限り、この言葉は正しい。1999年以降、この両球団は常に優勝争いを演じ、ポストシーズンでも度々死闘を繰り広げてきた。かつては黄金時代を築いたボルティモア・オリオールズやトロント・ブルージェイズですら、2チームの争いに割って入ることは難しい。ましてや、1998年創設の新興球団タンパベイ・レイズ(当時はデビルレイズ)にとっては、優勝争いなど夢のまた夢だった。球団創設以来、10年連続でシーズン負け越し。2003年には闘将ルー・ピネラ(現カブス監督)を指揮官に招聘しても、「負け犬根性」が染みついたチームに渇を入れることはできなかった。
選手の質は決して悪くない。スピードスターのカール・クロフォード外野手をはじめ、優れた素質を持つ野手陣は魅力的。エース左腕のスコット・キャズミアは、メジャーを代表する投手へと成長を遂げつつある。2007年には、岩村明憲内野手も入団。だが彼らの活躍をもってしても、チームを勝利へ導くことはできなかった。最終成績は、大方の予想通り地区最下位。人工芝に密閉式ドームという、メジャーの球場としては時代遅れな本拠地トロピカーナ・フィールドには閑古鳥が鳴き、こんなチームがメジャーに必要なのかという印象は、年を追うごとに強くなっていった。
しかし2008年、全てが変わった。球団名から「デビル」を取り除き、ただのレイズに生まれ変わると、これが「厄払い」の効果を呼んだのか、開幕から快進撃。「どうせ春の珍事、いずれは“定位置”に収まるさ」。そんな評価をあざ笑うかのように、レイズは夏を過ぎても地区優勝争いに踏みとどまった。そんな中で先に脱落したのは、昨年まで13年連続でポストシーズンへ駒を進めてきた名門ヤンキース。レイズはさらに、王者レッドソックスとのマッチレースも制し、初めての勝率5割、初めてのシーズン90勝、そして初めての地区優勝達成。映画『メジャーリーグ』のような、鮮やかな大逆転劇だった。
そんな「ミラクル・レイズ」において、走攻守に渡ってチームを引っ張り続けた岩村の功績は大きい。期待の新人エバン・ロンゴリアをサードで起用する為、今季からセカンドへコンバートされた岩村。だが「まるで昔からセカンドを守っているみたいだ」という称賛の声が挙がるほど、スムーズな守りを見せた。もちろん打撃でも、不動のリードオフマンとしてシュアなバッティングは健在。プレーオフでは、普段は観客動員に苦しむトロピカーナ・フィールドも満員のファンで埋め尽くされるだろう。その時こそ、岩村の真価が問われるときである。
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メジャーリーグ ワールドシリーズ2008特集

史上初の地区V! 岩村と「ミラクル・レイズ」は止まらない
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